らしくもない表情をしているなぁ。ちょっとだけ上の空になっている山吹薫を奇妙な笑みで眺めつつ内海青葉はそう思う。
心筋梗塞後のリハビリの多くはクリニカルパスやそれぞれの中止基準に従って介入する事が多いことは話したね。でも患者様もすごく不安なんだよー。また胸の痛みがくるんじゃないかな!?ってね。そしてその反面意外と多いのが、痛みが無くなったからもう大丈夫!って考えちゃう人かなー。
確かに・・・臨床ではどちらかと言うと少しだけ消極的な人の方が上手くリハビリが進むこともありますよね。でも目には見えない疾患だと自分の事を過信してしまう事もまたありますから、要注意ですね。
そうだな!それ故初回介入時にしっかりとオリエンテーションする事が重要なだ!それに加えて生活指導もまた必要なのだ!ついつい運動療法をまず考えてしまうが結局の所、そこ全てが掛かっているといっても過言では無いと思うと俺は考えておる。
両手を組んでふははは!と高らかに笑う岩水静はきっと何も気がついていないんだろうねぇと内海はため息を吐く。きっとそれは山吹薫も気が付いていない。
そしてプログラム通りに進めるといってもそこで思考停止はダメだとボクは思うねー。同じ心筋梗塞でも障害の程度は人それぞれだし合併症もまた多種多様だからね。その都度それぞれの疾患を考慮に入れながら介入を行う必要があるのあさー。何かおかしい!って直ぐに気がつけるのは運動を処方するボク達だったりするからねー。
なるほどですね。全てが全く同じに進む事はありませんからね。元々の体力もそれぞれで違うでしょうし。
そうだ!軽症の心筋梗塞の患者と重症例では大きく違う。運動強度を高める際に心筋が大きく障害された重症例では心破裂や他の重篤な合併症をもたらす事も多い。よってその都度確認する事が望ましいな!一日一日が戦いなのだから明日でも良いや・・・そんな考えは絶対にダメだ!
きっと新人ちゃんの中では新人と主任という枠組みという単純な話では無いのだなと内海は思う。それを感じているからこそ、山吹は主任ちゃんの事をいつまで経っても名前で呼ぶことは無いのだなとも思うのだ。
そしてプログラムが済んで退院が決まってはい終わり。と言う訳でも無いからねー。患者様は今度は再発予防のために長い年月を掛けて自分の生活を変えなきゃならないからねー。そこはもうしっかり指導!だけどセラピストだけでは無くて医師や看護師さん、管理栄養士さんを巻き込みながらやるのがベストだねー!
そしてやっぱり退院の後は不安になる。自分がどれほど安全に活動できるか・・・といった所だな!退院前に患者様の不安を取り除く事でそれからのQOLも保たれるのだからな!
そうですが・・・他人を変える事はすごく難しいと考えますよ。まぁこれからの課題なんでしょうがね。
ふーん。まぁそれにはまず自分の事を知らないとねー。
どう言う事ですか?との山吹からの問いにさぁねぇと内海は体を捻る。他人よりも自分の事の方が分からない。そんな言葉を噛み殺しながら。
山吹薫の覚書73
・入院時オリエンテーションは時間を掛けてしっかりと行う。それがその後の生活指導にもつながる。
・一日一日がとても重要。短期の入院ともなりやすいため、その後の生活指導も並行して行う。
・僕は僕の事をわかっているのだろうか。
【〜目次〜】
『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。
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